老舗食堂の名物はビールとの相性バッチリ!

2016.3.7更新

京都三条『篠田屋』の皿盛とビール

 京都の古い食堂でのんびり食べる遅めの昼ご飯。ビールの1本もつけたらさらに気分よくなること間違いなしです。ビールと一緒に食べるのはカツ丼やラーメンもいいけれど、おすすめしたいのはあの老舗食堂の名物メニュー!

 映画『幸せの黄色いハンカチ』で、出所直後の高倉健はとても旨そうにビールを呑む。そしてカツ丼としょうゆラーメンを、これまた旨そうにガツガツ食べる。観ているだけで食欲をそそられる場面だが(その前のお勤めは遠慮したいが)、そこに出てくる食堂がまた古くていい感じのお店なのだ。もちろん古いというのも今から見ればの話で、当時にすれば普通の田舎の食堂なわけだが観れば観るほどそそられるものがある。

 

 そんな風な、ちょっと懐かしい感じの食堂に行きたくなったので京都三条の食堂『篠田屋』へ。時間は16時すぎ。中途半端な時間だが、お店の休憩明けがこの時間なのだ。しかも昼ご飯を食べずにうろうろしていたので腹は相当減っている。いわばハングリアン民族である。16時30分、お店のご主人が戸を開けると同時に入らせていただいた。

西日差す静かな食堂の午後の四時

ズラッと並ぶメニューの中でもひときわ目立つ皿盛の2文字

 「なんだか薄暗いなあ」。それが、篠田屋さんの店内に入ってすぐに感じる印象だ。この薄暗さはなにかに似ている。それは、ちょっと昔の日本家屋の薄暗さだ。過度な照明はなく、灯りといえば窓から差し込む光とささやかに輝く蛍光灯だけ。昼間は天気がよければ明るくなるし雨なら当然暗くなる。そして夕方になれば西日が差して、床に影がすーっと伸びる。薄暗いのではなくて、これこそが本来の明るさなんだな。

 

 ボケッと座っていてなぜか落ち着くのは、その明るさのせいだろうか。そうそう、それともうひとつ。お店の中は、音がない。テレビもなければラジオもない。聞こえるのはお店のおばさんたちの声とお客さんの話し声、それに食べる音くらいだ。静かだから大きな声でしゃべる人もいない。そのへんは忙しいお昼時に行けばまた違うかもしれないだろうが、この時間帯はとても静かな雰囲気だ。

 

 壁に張られたメニューの貼り紙を見てみた。篠田屋さんには名物がいくつかある。たとえば、天ぷら、肉、玉子入りの「デラックス丼」。読み方は「でらっくすどん」、ではなく「でらっくすどんぶり」らしい。その具の豪華さ、確かにデラックス。間違いなくデラックス。天ぷら、肉、玉子の三国志と言ってもいい。言わないけど。もちろん、これがかなり旨い。そして満足度がすこぶる高い。繰り返しになるが、なにしろデラックスだから。

 

 さらに、店内の誰かが必ず注文しているのが500円の「中華そば」。シンプルな、いかにも中華そばという感じの中華そばで、じゅうぶんなボリュームもある。おそらくお店で2番目の人気メニューだ。そして壁でもひときわ目を引く貼り紙の、間違いなく人気ナンバー1メニューであろう「皿盛」。そう、この日食べにきたのは皿盛なのだ。

カレーあんのトロみ!青ネギとカツの旨み!

青ネギの存在感も素晴らしい。これがかなりいい仕事をするのである。

 篠田屋さん名物の皿盛。2016年2月現在、650円。ぱっと見はカレーライスっぽいがちょっと違う。ご飯の上にカツ、そして和風のカレーあんがかかっているのだ。少し甘めのカレーあんに唐辛子で辛味が加えられているのが実にいい塩梅の旨さ!そのトロッとした甘辛さに青ネギの苦味とシャリシャリ感が加わり、他にはない味、食べ応えとなっているのだ。

 

 そして、薄いがかなりの存在感を誇るカツ。肉は思った以上にしっかりしているし、薄いだけに衣の歯ざわりと味がかなり効いている。カレーあんのトロみと青ネギのシャリシャリとカツのサクッが混ざり合う、不思議な口当たりと旨さ。これがクセになってしまうのだ、この皿盛は!

ぱっと見ればわかる、この〝トロみ〟!これが実に旨いんです!

 決して「すげえ旨い!こんなに旨いもの食べたことない!」という味ではないが、「近所に1週間に1回…いや2回くらい食べちゃうかもしれないな」という旨さ。それって、食堂の旨さとしてはある意味で最高峰ではないだろうか。

 

 このようにとにかく旨い皿盛だが、ひとつ気になっていることがあった。皿盛を食べる多くの人が、一緒にビールを頼んでいるのだ。平日の夕方、新聞片手に来て皿盛とビールを頼む老紳士。週刊誌片手に、皿盛とビールを頼むサラリーマン。これまで、そんな人の姿を見るたび気になっていた。皿盛とビール。その組み合わせってどうなんだろうか?

 

 今回は、それを頼んでみようと思っていた。正直なところ、いつかやってみようとは思っていたのだ。今、万感の思いを込めて注文してみよう。

 

「皿盛と、ビール小瓶お願いします」

 

万感ってのは、まあちょっと大げさではありますがー。

ビールの苦味とカレーあんの甘辛さがたまらない

 注文してから、当然ビールが先に来た。アサヒスーパードライの小瓶とビールコップだ。ここは、時間もあることだし『幸せの黄色いハンカチ』の健さんの真似をして飲んでみよう。ビールをなみなみ注いで、両手で大事そうに抱えて一気に…いや、危ない危ない!一気に飲んではいかんのだ。皿盛とあわせて飲まないといけないので、ここはちびちび飲まないと。結果的に両手で抱えてちびちび飲むという懐かしのピロピロ飲みみたいになってしまった。まあ、いい。誰も見ていない。

名物の皿盛とビール!この組み合わせが、最高なのだ!

 5分立たずに皿盛もきた。あらためて、目の前の皿盛とビールを眺めてみる。

 

「なるほど、なるほど。こうなるわけか」

 

 特に意味もなくつぶやいてみた。この時点では口の中はビールの苦味が幅を利かせている。そこにカレーあんを放り込んだ。苦い!甘い!ちょっと辛い!甘いような辛いような和風カレーの風味とトロみが、一瞬苦味と混ざり合った。そして苦味はすぐに飛んでいき、後は和風カレーの味がじわじわと口の中に浸透していく。この流れ、旨すぎる!

 

 カレーあんを飲み込んでから、すぐにビールをひと口。先ほどとは逆に、甘辛トロみが残った口の中をビールの苦味が洗い流していくようだ。特に、舌の上に残ったカレーあんをビールが土俵際で寄り切るように流していく感じがたまらない!その苦味が残っているうちに今度は青ネギ、カツ、カレーあん、ご飯をまとめて食べた。それらの味の連合軍が、ビールの苦味の残り香をまるっと駆逐していく。味だけではない。シャリシャリ、サクサク、トロトロといろいろあってややこしい歯ごたえに思わず夢中になってしまう。素朴といえば素朴な食べ物なのに、なんだかいろいろややこしい。だが、それが本当に楽しく旨い!

 

 このように皿盛を食べる、ビールを呑むという動きをひたすら繰り返し、気づけばあっという間に完食していた。途中でビールの量が心もとない気もしたが、口の中に苦味をいれるという役目と割り切ればやはり小瓶で十分だろう。なにしろ皿盛が650円でビール小瓶が350円。あわせて1千円札1枚なのだから、その気持ちよさを思えばやはり小瓶がちょうどいい。

 

 多くの人が楽しんでいた皿盛とビールの組み合わせ。絶対旨いと思っていたがそれ以上だった。正直なところ、普通にお昼ご飯を食べに行ったとしても、思わずビールを頼んでしまうだろうというくらいに旨かった。自制する気は一切なし!やはり、みんなが頼むものにはそれだけの理由があるわけだ。納得、いや、大納得!

今回のひとり呑み代

 

ビール小瓶 350円

皿盛 650円

 

合計1,000円

 

※税込み 

 

「篠田屋」

TEL 075・752・0296

営業時間 月~金 10時~15時 16時30分~19時 日・祝 10時30分~19時

       

定休日 土

 

住所 京都府京都市東山区三条通大橋東入大橋町111